読書は、表現と出会う旅。今の私をかたちづくるきっかけをくれた4冊-天野聡美

 

こんにちは!20卒新入社員の天野聡美です。コロナ禍の影響で、4月からのスケジュール帳はまっしろ。なんだか寂しいなと思って、最近はその日に読んだ本や映画の作品名を記すようになりました。人に会えない分、作品と出会う日々を送っています。

さてさて、今回の記事のテーマは「自分の人生に影響を与えた本」。好きな本って、その人の人生観を色濃く表すもので面白いですよね。今日は、今の私をかたちづくるきっかけを与えてくれた4冊をご紹介したいと思います。コーヒー片手に、リラックスしてお楽しみいただけたら幸いです。

 

<今の天野聡美をかたちづくるきっかけをくれた4冊>

1.青空ポップ/小桜池なつみ
2.夜のピクニック/恩田陸
3.僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ
4.ブリーダ/パウロ・コエーリョ

 

望む変化に自分がなるという道を教えてくれた

 

青空ポップ/小桜池なつみ

 

弱気になってしまったとき、守りの姿勢に入りそうになったときに読み返している少女漫画。小学校のときに出会ってから、ずっと心の引き出しに大切にしまっているセリフがあります。

「前例がないなら、私が作るわ」

青空ポップは主人公の織花が、モデルを目指し奮闘する物語。モデルの世界が題材となっており、洋服やキャラクターたちの可愛さ華やかさもさることながら、1番の魅力は、登場人物たちの強さ!一人一人の生き様が格好良くて、勇気をもらえます。普段少女漫画に馴染みのない方にも是非手に取っていただきたいです。

「前例がないなら私が作るわ」-このセリフは織花の母でありトップモデルだった詩織が生前口にしていたもの。この一言に鼓舞され決断した私の選択をお話ししたいと思います。

 

【大学で所属していた競技ダンス部での話】

大学生の時に、社交ダンスを競技化した競技ダンスの活動に励んでおりました。社交ダンスにはスタンダードとラテンの2種類にジャンルが分かれていて、部活の中では1年生の末に、専攻を1つに絞らねばなりませんでした。そこで私は好きだったラテンを専攻することを決意。専攻が決まったら、次は一緒に踊るペアを決めなくてはならないのですが、一緒に踊る相手を決める上では、同じ大学の部内の同期か、他大学の同期かという2つの選択肢がありました。

当時、所属していた部では私が専攻しなかった「スタンダードが強い」という風潮が強く、「聡美がラテンで勝ちたいと思っているのなら、他大とペアを結成する方が良い」とある先輩に勧められていました。「そっかー、勝ちたいからそうしよう」とすっかりその気でいたのですが、同じ大学の先輩が活躍する姿や、同期との絆を深めるうちに、

 

「わたしもこの大学の背番号を背負って戦える選手になりたい!」

「前例がないのなら、私たちの代で強いラテンを作ればいいんだ!」

 

と気持ちの変化が生まれ、部内の同期とペアを結成するという道を選びました。何としてでもこの道を正解にしてやるという野心も相まって、最終的にこの選択は正しいものとなりました(パチパチパチ〜!)。

前例がないから諦めるのではなく、「こうなったらいいな」「こうしたいな」と思うことに対してポジティブな姿勢でありたいと思う経験でした。前例がない、だから諦める。ではなく、前例がない、だったら私が作ってみせる。望む変化に自分がなるという強い気持ちは、今後も持ち続けていきたいと思います。

 

心でぶつかる勇気や、「戦う愛」が足りないときに

 

夜のピクニック/恩田陸

 

ふと、突然食べたくなるものってありませんか?

私は唐突にはちみつレモンが恋しくなる日があります。夜のピクニックは、はちみつレモンのシャーベットをいただくような感覚に近いです。小学校のときに出会い、何度も読み返したせいで擦り切れたカバーを見かねて再購入した2冊目もすでにぼろぼろ…。それくらい大好きな1冊です!

この本の舞台は高校最後を飾るイベント「歩行祭」。全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという行事に、3年生の甲田貴子は小さな賭けを胸に臨みます。前半はクラスの友人と、そして後半は自由行動。この本を読むと、私が自由歩行の場にいたら誰と話すかな、どう過ごすかな…と考えます。読み返すその時々で心に思い浮かぶ人物は変わるのですが、そのひとたちに共通するのは私が「大切にしたいのに、心でぶつかれていない人」です。

自身の家庭環境のことと、過去に傷ついた経験から、自分は周りの人よりも出遅れていると感じていました。だから貴子と同じように、人をけなす資格もなければ、責める資格もない。人と接するときにいつもどこか諦めの気持ちが根底にあり、私はなんて酷薄な人間なのだと自分に絶望する瞬間が少なからずありました。心を開くことや向き合うことから逃げているとき、ふと手に取りたくなるのがこの本です。今、自分が「話すべき人」の存在を思い起こしてくれます。

今回も読み終えてから、1人の人物が脳裏に浮かびました。それは、「大切にしたかったけど、心でぶつかれなかった人」です。今後きっともうお互いの人生が交わることはないのですが、伝えられていなかった「あの時の感謝」「あの時のごめんなさい」を今なら言える!と久しぶりに連絡をしました。ものすごく勇気が要りましたが、想いをきちんと伝えられた後にはやはり、心に爽やかな風が吹きました。

考えていることや心のうちを晒すことは、誰に取ってもすごく勇気のいることだと思います。その心のうちを受け取ったときに、そのひとの勇気を讃えられるようなひとでありたいと思います。

はちみつレモンのシャーベットみたいなひとときを。甘酸っぱさと、ひとつまみの苦味と、スッと抜ける爽やかさが体内を駆け巡ります。

 

多様性は、ひとを優しくする。無知の加害者にならぬために、学び続けたい。

 

僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ ブレイディみかこ

 

最近読んだ中で1番グサっときた本です。こうでなくちゃいけないという鋳型にはまって生きてきたのだと痛感し、自分が「無知であること」を突きつけられました。

この本は英国に住むみかこさんと、中学生の息子さんの日常生活を描いたノンフィクションです。カトリックの私立小学校から公立の「元底辺中学校」に入学した息子が、社会を色濃く反映しているスクール・ライフに無防備にぶち当たっていきます。その様子は地元の公立中学校から私立高校へと人生の駒を進めた私とどこか重なり、庶民とエスタブリッシュという環境の変化に対する「自分がどこにも属していない」という気持ちの揺らぎを思い出しました。

この章では、かつて自分が引け目を感じていたという話をしたいと思います。私は両親が離婚していて、物心着く前から父と別居しています。家族全員が同じ家に暮らしていて、仲睦まじい過程が「正常」だと思っていたので、自分の家族は「異常」なのだと思い込んでいました。例えば住宅のCMひとつとっても、そこに出てくるのは父と母と子供達が仲睦まじく団欒を楽しんでいる様子です。何度もそういったメディアを目にすることで無意識のうちに「当たり前」のバイアスに拍車がかかり、家族の形に対するコンプレックスを抱くようになりました。

「異常であるかもしれない」という思いは、学生生活を通しいろいろな形の家族と接する機会ができたことで「正常なんてない。定義をするのならば、どの家族のかたちも正常だ」と次第に解消されて行きました。本当の多様性について考え直すきっかけになり、著者でありパンクな母ちゃんであるみかこさんに「そうだよ、あなたもそのまま堂々と生きればいいのよ。」と、トンと背中を押されたような気がしました。

その一方で、離婚しているんだと伝えることで心配という名の偏見も経験しました。相手にとっての優しさが、気を使われているというストレスになりうることを体感し、自分が知らないだけで、私も無知の加害者になっていることに気づき、かなりの衝撃を受けました。

無知であることを知る。決めつけずに、いろんな考え方をしてみる。多様性は、より人を優しくするものです。人を傷つけることはどんなことでもよくありません。無知の加害者にならぬために知る努力をしようと、自分が学ぶ目的を見出せました。

 

人を愛することと英知の姿勢を与えてくれた1冊

 

ブリーダ/パウロ・コエーリョ

 

最後の1冊は、ブリーダ。この本に出会うきっかけをくれたのは、私が大好きな表現者・伊藤万理華さん。彼女が乃木坂46を卒業する時に発売した写真集・エトランゼにこの小説の一節が記してあります。

「一本の道を極めるということは、他の道を諦めるということだ。まだ人生は丸ごと残っている。」

大学生だった当時、何かに縛られることが怖いと、人生で道は1本しか選んではいけないのではないかと恐怖を感じていた私に一筋の光をくれました。この言葉は、私の支えになっています。そうして手に取ったブリーダは、人を愛することと、英知について教えてくれました。

 

学生の頃にかけてもらった言葉で、すごく印象に残っている言葉があります。

「学生の時に学んでおくべきことは3つ。英語と、プログラミングと…」

3つ目はなんだと思いますか?想像してみてください。

「恋愛。」

目からウロコでした。

自分ではない誰かを理解しようとする姿勢が大切なのだとその人は教えてくれました。英語もプログラミングも、今となっては学校に組み込まれているカリキュラムですが、「恋愛」や「愛」については学んだことがありません。

ブリーダは、アイルランドに住む少女ブリーダの、英知を求めるスピリチュアルな旅に出る物語。ふたりの師から魔術を学ぶことで、愛と情熱に満ちていく姿が描かれています。彼女と一緒に、なぜ人を愛するのか、恋に落ちるのかを知ることができると思います。

英知とは知ること、そして変わること。「自分ではない誰かを理解しようとする姿勢」の意味を深く伝えてくれました。自分自身について理解すればするほど、世界についても理解できるようになると記してあります。3冊目にご紹介した「僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー」でお話しした無知とも重なる部分がありますが、「知る」ことの重要性が伝わってきます。

人を愛するということ、そしてそれがどんな意味を持つのかを、皆さんに届けてくれると思います。大切な人を思い浮かべながら読んでいただきたい1冊です。

 

本との出会いは、表現との出会い

 

私は本を読むことが好きです。本に限らず映画など、何か作品に触れる時間は、私にとって表現と出会うための旅のようなものです。自分の思考が拡張されることや、素敵な表現と出会う瞬間が心地よいのです。ふらっと本屋に赴いて、そこで強く惹かれる本を1冊だけ購入するという趣味があるのですが、その時の自分だからこそ選ぶものは、心境がよく表されているなあと思います。思い掛け無い本との出会いがある日常がそろそろ恋しいですが、もう少しの辛抱ですね。

みなさま、どうぞご自愛ください。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

(執筆:天野聡美、編集:風間夏実) 


この記事は、2020年エードット新入社員研修の中で書かれたものです。これからも弊社新入社員をどうぞよろしくお願いいたします。また、現在エードットは一緒に働く仲間を募集しています。エードットの採用にご興味お持ちの方は、ぜひ下記のリクルートサイトよりご応募ください。お仕事のご依頼・ご相談もお待ちしております。

 

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